花鳥風月記

流れる水に文字を書く

飯館村 放射能と帰村

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新宿のK’sシネマにて。
この映画館は、わりと硬派なものを上映する。
今回も、ドキュメンタリーを特集していた。

残念なのは、観客が少ないこと。
平日の14時過ぎということもあるが、
もうちょいいてほしいなあ…と。

この映画は、福島第一原発の事故により、
強制的な避難と、不自由な生活を余儀なくされ、
今だ、移住と帰村の狭間にゆれる飯館村の村民を追ったものである。
監督は、土井敏邦パレスチナを撮り続けていたらしいが、
東日本大震災原発事故が起きてから、福島を撮り続けている。

パレスチナ飯館村に共通するものは、
きっと「棄村」あるいは「棄民」という視線だろうか。
政府や大企業の論理に翻弄される人々。
真実が語られず、何を信じていいか分からない不安。
知らされなかった、長期間の被曝による健康不安と将来不安。
意味も果てもない、除染作業とその利権構造のありつく大企業。
映像は、2つの家族の生活を軸に、丁寧に人々の証言を折り重ね、綴っている。

女子中学生だっただろうか、東電の説明会での質問に
「私は将来、結婚し子どもを産みます。
その時、生まれた子に障害があった時は補償されるんでしょうか?」
という問いが胸に刺さった。
座談会のように語らっていた主婦たちの眼からは、
悔しさと自責の涙が流れる。
知らなかったといえ、将来に対しての不安を
子どもに背負わせてしまった。その子だけでなく、
その子の産んだ子供まで…。

甲状腺の検査の際、医療関係者の子どもに対する扱い(資料)に
憤りを感じつつ、いわれのない差別にも苦しむ。
全ての不都合の押し付けが
結局は、何の罪もない人々に押し付けられる。

そんな社会の矛盾が、はっきりと表現されていた。

多くの人に、観て欲しい。