花鳥風月記

流れる水に文字を書く

男はつらいよ50 お帰り寅さん

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大阪に行った時に、天王寺に近い映画館で観た。

 

正確に言えば、寅さんは帰っていない。

甥の満男とかれを取り巻く人間模様を

おさらいのように描いている、という感じだった。

 

懐かしさが先行して、評価は出てしまうのだろうが、

個人的には、映画を引用しながらホームドラマが上映された、

という印象だった。現代がどうしてもスケールが小さくなってしまう。

映像もそうだが、音響がオーケストラスタイルで収録された映画と

現在の音作りに違いを感じてしまう。

 

満男の小説家に転身も意外だったが、

考えてみれば、「現代のフーテン」を探す際の

消極的選択肢だったのかもしれない。

とらややさくら一家を見ると、

「老いることとは、小さくなる」という

今後の日本社会を暗示しているような気がする。

 

劇中に寅さんが挿入画のように入ってくるが、

この手法について、横尾忠則氏が

自分の案を勝手にまねた、と週刊誌に激白して

話題となっていた。

山田洋次監督は否定しているが、

恐らく、寅さんの、そして日本映画に対する葬送曲

という意味合いがあるので、伴奏者を求めなかったのだろう。

 

「知ったような口を叩くんじゃねぇぞ!」

寅さんに叱られたいなあ…。