花鳥風月記

流れる水に文字を書く

ヒミズ

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大阪・梅田のブルク7にて。

原作は最初知らずに観た。

何かに希望を持つことなく、そして生活環境に絶望を感じる住田。
彼の目的は「普通」になることだった。
そんな彼の考え、振る舞う一挙手一投足に心酔する茶沢。

平凡な暮らしを夢見る中でも、それを許さない運命が忍び寄る。
住田は両親に捨てられ、そして父親を殺してしまう。
父親への罪の意識ではなく、
人を殺めたことで「普通」になれないことに絶望する住田。
やがて彼は、「おまけ人生」という中で奇行を繰り返すようになる。

日常の中にある狂気というものを、園子温はよく取り上げる。
愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」「恋の罪」と立て続けに観ていくと、
キャストは当然のこと、その表現手法もかなりかぶる部分がある。

しかし、今までと違うところが、今回の作品は、
「劇的」というより「詩的」であった、ということ。

映画を観た後、原作本を読んだが、園はラストに至るまで書き換えている。
それは、彼のインタビューを見ると「希望に負けた」という言葉が
物語っているように思える。
東日本大震災の後、絶望も何もないだろう、と。
むしろ、そんな中で希望を持つことが、どれだけしんどいことか。

そのしんどさを、園独自の手法で、胃のように「心が凭れる」
作りこみをしているように思える。

詩的とも純愛ともとれるこのストーリーのラストは「頑張れ」の連呼だった。
まさに、震災の時に嫌というほどながれたACの広告のような凭れぶりだった。
それに全力でぶつかっていった染谷将太二階堂ふみの演技が秀逸だった。