花鳥風月記

流れる水に文字を書く

園子温 『非道に生きる』

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映画監督の園子温の半生を振り返った本。
朝日出版社の「ideaink(アイデアインク)」というシリーズの一冊。
(先日倒産した理論社の「よりみちパン!セシリーズ」の継承版なのだろうか…)

ともかくも「エッジの利いた」人物の生き方を読もう、というものである。

「愛のむしだし」から観て、「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」と続き、
先日「希望の国」も観た。
その一つ一つにアクがあり、非現実的なシーンからリアルを引き出す
変わった作風と感じていた。

この本を読んで、そのバックグラウンドが良く分かった。
下半身丸出しの何が悪い―最初は自らを表現することから始まっている。
破天荒で貧乏な生活の中から、「映画を当てる」様々なアイデアは、
革新的というか、痛快でもある。
ただ、その過激な表現の中にあっても、常に弱い立場の人といる。
寄り添うわけでもなく、「見つめている」
そこから彼の文体が出来上がってゆく。

彼の言う「非道」とは、人倫に悖(もと)るという意味ではなく、
人が普通に進むと思われる「道」からの脱却であった。
読み手の中には、その生き方に「かっこよさ」を感じる人は多いだろう。
しかし、その言葉を発する重みにどのくらいの人が気づくのだろう。
読み終わった後、そう感じた。